森末由美子(もりすえゆみこ) 個展 「風通しのいい場所」
2015年5月11日(月)~30日(土)12:30~18:30  日曜休み

「かすあげ」2015年 かすあげにレース編み ©Yumiko Morisue

森末由美子は1982年に京都に生まれ、京都市立芸術大学大学院美術学科版画専攻を修了、京都を拠点に制作、
国内外で発表活動を展開しています。  
森末は見慣れた日用品や身の回りのものを使い、それらに細やかな作業を施すことによって日常の風景を少しだけ変化させます。 
緻密な計算と超絶技巧に裏打ちされながらもそこはかとないユーモアを醸し、日用品のもつ本来の意味と再構築された造形との
絶妙の差異に見る者は深く魅了されます。 
今展ではガラスコップやざる等にレース編みを施した新作を出品します。 過去のざるなどに刺繍を施した一連の作品は、
例えば面(ざる)をすり抜けて向こう側(ざるの外側)に越えることが出来るのか、という着想から制作を始めました。
かってはどこの家庭にも見られたレースの手芸品、森末は短期間で習得したレース編みを駆使しますが、そこには
ノスタルジーの再現もテクニックの披瀝も微塵もなく、ただただ隙間をぬって線から面を作り出すという作業に
レース編みというテクニックを選んだのです。 水を飲むガラスコップは中身が透けて見えるがもはや水は湛えられない、
レース編みでありながらもはやそうではなくなっているかもしれない、森末はものがものである意味をなくしていく
ギリギリの境界を探りながらかたちをつくっていきます。 完成された作品には作家が費やしたであろう並々ならぬ労力や
手垢の跡は見えない、水がざるやガラスを通り抜けて流れるままにかたちをつくるとしたら、とふと思わずにはいられないほど
レースの編み目が滴るように広がっていく風景を見るだけなのです。

「ざるはレタスを通しませんが、水は通します
ガラスコップの中の水はこぼれませんが、透明で向こうが透けて見えます
ざるもコップも確かに在るのに、スカスカに透けてどこか頼りなく思えてきます
あるような、ないような
越えられるような、越えられないような
面をすり抜けて向こう側に越えることは出来るのでしょうか
通り抜けることで、べつの新しい平面がつくられたり
通り抜けきれずに境界面に閉じ込められたりするかもしれません」 アーチストステートメントより